問わず語り
 

デルス・ウザーラ

「デルスウザーラ」という本をまた読んでいます。
これで三度目ぐらいか、折りにふれ部分読みしているので
10回以上はページを繰っているのだろう。
25年ほど前に黒澤明監督がソ連のスタッフと共同で同名の
映画を製作し、見に行った。
主人公のデルスの生き様とシチュエーションに惹かれて早速本を購入したのだが、
一度は失くしてしまい、しばらくしてまた買い直した本だ。
作者はロシアの地理・地質学者、アルセーニコフ、訳は詩人の長谷川四郎。河出文庫。
舞台は1902年シベリアの沿海州、ウラジオストックの北、ウスリーの山林地帯。
当年53歳の原住の民(ナナイ族)の猟師「デルスウザーラ」と探検調査隊の物語だ。
(アルセーニコフが日記をもとに書き起こした文章だから、デルスは実在の人物)

デルスは、天然痘で家族を亡くし、家もない。
父から受け継いだ単発の?ベルダン銃ひとつで全ての必需品をかせいでいる。
彼は生き物も自然現象でさえも「人」という。パチパチと爆ぜる火を悪い人といい、
森の王者、虎(アンバ)を強い人と敬う。
動物の足跡からその状態まで解り、風を読み湿度を感じ気象を予測する。
寒さに強いロシア人さえ凍える夜にも、戸外で即席に柳の枝を組んで作った
簡易のテントで、毛皮一枚肩に羽織り座ったまま熟睡する。
1発で牝の猪をしとめ、なぜもっと大きな雄を撃たないのか問うと
「あれ、としよりの人、あれたべる、うまくない。肉、すこし、くさい」
冷静なアルセーニコフが次第にデルスの魅力にはまっていく序の項の概略です。
もうひとつ。 山の中で粗末な小屋をみつけ休憩したあと、薪とシラカンバの皮とマッチを 持ってデルスが小屋に入っていった。彼が小屋を燃やすのだとおもい、やめせようとした。 彼は答えようとせず、ひとつまみの塩と少量の米をくれと言った。
デルスは丁寧にシラカンバの皮でそれらを包み小屋のなかに吊した
「きみはここへかえってくるつもりか」ときくと、彼は否定的に頭をふり
「誰か、別の人くる。かわいたマキみつける、マッチみつける、くいものみつける、
死なない」と答えた。

長い紹介になりました。もう終わります。文庫本で上下巻の長編です。
挿し絵にあるデルスのずんぐりむっくりで、がに股のうしろ姿が とってもいい味です。

 
button_back