問わず語り
 

帰るべき故郷がある人は幸せ

犀星が
故郷は遠くにありて想うもの、そして悲しく唄うもの
よしやうらぶれて異土のかたい(乞食)となるとても
帰るところにあるまじや

とうたいながら、その言葉のうちに込められためくるめく故郷への想いを、
この歳になってやっと判ったものだ。
じじ、ばばが逝き、親を亡くし、叔父、叔母も年ごとに去っていく。
知り合いも代がかわり、墓参りにいっても、気楽にわらじを脱いでくつろげる
親類縁者がいなくなってしまった。
都市に住まう私達の淋しさは一様に同じかもしれない。

帰るべき故郷が欲しい
あの懐かしい
山の緑や川の小魚や
日ぐれて赤く燃える海が見たい
日焼けした黒い皺だらけの顔で
よう来たなぁ 
と言葉少なに出迎えてくれる
無骨な笑顔が見たい

故郷は遠くにありて想うもの、そして悲しく唄うもの

 
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