問わず語り
 

業界のカタカナ語


もう十五年も前になりますか、バブル景気のはじける前
企業はこぞって「CI」=コーポレット・アイデンティティ
なるものを口にしていました。
舶来語に弱い私が、仕事で打ち合わせに行くと、
「CI」をするから「ロゴ」を作ってくれなどと言われて
頭の中に?マークが渦巻いたことがあります。
会社へ帰ってから社長に「CI」ってなんですか、って聞いたら
私に尾をかけたカタカナ嫌いの社長はそんなもん知らんというし、困ったことがあります。
結局「企業戦略」と訳して、具体的には、
イメージカラーやロゴマークを決めて、「企業コンセプト」(概念)を
明確にしていくということらしいのでしたが、実は今もってよく解っていません。
その頃から私たちデザイン業界もいわゆる図案屋からの脱皮を余儀なくされ、
職人「その1」の私には住みにくい世界になっていきました。
20人ほどの小さなプロダクションでしたが、社員の名刺の肩書きも
デザイナー、プランナー、コピーライター、ディレクターなどの
カタカナや英語をつけるようになりました。
肩書きの付け方は(内緒ですが)、
入社したての若いデザイナーの卵はデザイナーで、古株になるとディレクターになります。
コピーライターも同じく、チーフはプランナーを名乗っていました。(二人だけしかいませんでしたが)
職人「その2」のはずの社長はなんとディレクターと代表の二つの肩書きを付けていました。
ワタシは頑固者で旧い人間ですから肩書きは「なし」で通しました。
そういうところから、巷では「カタカナ業種」のひとつに組み込まれて行きました。
いま私はフリーで自宅で仕事をしています。勿論不景気ですので大した仕事はしていませんが、
あるとき、こんな私の業態を見て、あなたは「ソーホー」ですねといわれました。
「ソーホー」ってなんですかって聞きましたら。
「SOHO」=スモールオフィス・ホームオフィスの略だっていわれました。
「家内職」よりも少しばかり格好がいいかも知れませんが偽悪趣味の私には
似合わないので一度も使ったことはありません。
最近、広告代理店の若い連中によく言われる言葉で、
「カンプ」←(擬似製品)を持って打ち合わせをしてると、
「全体の仕上がりをもう少し『スキル』度を上げて下さい」とか
「このビジュアルは『シズル』感が足りませんねぇ」などと言われて、
頭を掻きむしったことがあります。
みなさん解ります?「スキル」と「シズル」。
「ジキル」と「ハイド」じゃありませんよ。
「スキル」は、技術と訳すんだそうです。
「シズル」は写真用語で、英語の擬音語からきてるんだそうで、
肉などの焼けるジュージューという音で、食欲を刺激されることから
シズル感などと使われ出したんだそうです。
ジョッキに冷えたビールを注ぐと、グラスに水滴がつきますが、
あの水滴の感じが「シズル感」と言うんだそうです。
「シズク」「ススル」を合わせた日本語に似てるので、業界の連中は
使いまくっています。
最近私が耳にした一番新しいカタカナ語は「コラボレーション」です。
(異なる才能が集まって共同の仕事をする。プロジェクトチームのこと)
……別に覚えなくてもいいですからね!

 
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