問わず語り
 

カツオ

カツオという魚は浮き袋を持っていないので
浮力を得るために、泳ぎの上手な他のサバ類より
いっそう速く泳ぐんだそうです。
運動が激しいので酸素の消費も多く、呼吸のしかたも、
えらぶたを開閉しているだけでは足りず口を開けたまま 水中を突進し呼吸水をエラの表面へ流します。
カツオにとって「停止」は窒息を意味するんだそうです。

私のテニスクラブの仲間で川村君(仮称)という青年がおります。
「BEERS」という、いかにもアフターテニス主体といったネーミング通り、
ふやけたテニスクラブですが、彼だけは、アフターではなくスポーツそのものが
大好きで、参加のときは片時も休まず動き回っています。
瞬発力、反射神経、持久力、ゲームの駆け引き、闘争心も申し分なく、
我がクラブのエースです(あくまでも草テニスですけど)
私などは彼をみているだけで疲れてしまいます。
ある時、彼に恋人ができました。相思相愛で、むしろ彼女の方が
夢中になっているようすでした。コートに一緒に来て、人目も
はばからずじゃれあっています。
ときどき「蹴り」を入れるのですが、全く意に介しません。
残念なことにその彼女はスポーツがあまり得意ではありませんでした。
最初のうちは好きな彼の大好きなスポーツですから、彼女も
努力していましたが、どうしても今ひとつ好きになれないようでした。
そのうちにコートに出て来ないようになり、毎週来ていた彼も、つられてか 回数が減ってきました。 そんなある日、彼が会社で倒れたという報が入りました。
医師の診断で自律神経失調症ということでした。
彼女が相談にきて言うには、仕事上の過労や人間関係でのトラブルがつづき ストレスが累積しての発症ではないかと思う。そして、なによりも
それを発散するテニスが存分に出来なかったことが原因ではないかと思っている。
と胸のうちを話してくれました。
その後、彼と彼女は目出度くゴールインし、可愛い女の児も生まれました。
彼は、いまや奥さん公認で、所用と重ならないかぎり、
毎週コートを走り回っています。
 
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