問わず語り
 

川上犬

中学生のころ、戸川幸夫さんが書かれた「高安犬物語」を読んで犬を飼ってみたいと思った。
それも日本の在来種にあこがれたが、手に入れる方策がなく近所に捨てられていたスピッツの混血種を親に頼み込んで飼い、可愛がっていた。
それはそれで、想い出すエピソードが色々とあり。犬のことを考えるときの私のエッセンスになっている。
日本犬のルーツについてはその筋の研究者に任せておくとして、現在、日本犬の分類として、大型犬(秋田犬)中型犬(紀州犬)中小型犬(甲斐犬)小型犬(柴犬)と四つの代表種に分けているようです。
他に、北海道犬、四国犬、川上犬といった犬達が現存しています。
日本犬は主に狩猟犬として飼われていた歴史があり、いかにも、日本の山河を駆け巡るに適した、四肢と体躯を持っています。
グレートデンやセパードやドーベルマンやピレネー犬では日本の鬱蒼としげった山の木々を敏捷に駆けるにはちょっと不向きかなと思えます。
長野県の山間を走る鉄道に小海線があります。日本で一番高い駅として知られる「の
べやま」の東に高原野菜の出荷の盛んな「川上村」があります。周囲を2000m級の山に囲まれて、小海線が敷かれるまでは陸の孤島ともいわれていました。川上犬のふるさとです。ほとんど純血が絶たれたといわれる「信州柴犬」のなかで唯一の名乗りをあげている川上犬です。奇跡にちかいといわれています。
戦時中、犬を飼うことがとても難しかったようで。食料難でもありましたし、軍部からの供出命令も地方によってはあったようです。あわれにも撲殺された犬達もあったと聞きます。その中で、「山仕事をする人に預けられた」つがいの二頭がかろうじて生き残り、仔が生まれ、ひっそりと犬好きの方に育てられたそうです。
現在では、三、四十頭の「川上犬」が川上村に大事に飼われているそうですし、全国には何百頭も現存しているようです。
ニホンオオカミや高安犬のように皮だけとか名前だけにならず。
村の誇りとして愛され、生き残れて、なんだかうれしい話です。
山歩きの頼りになる友として自在に藪を漕ぐ姿態を頭に描いています。


川上犬
 
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